東京地方裁判所 昭和46年(借チ)25号 決定
〔主文〕1 申立人が、本裁判確定後三か月以内に相手方に対し金八九〇、〇〇〇円を支払うことを条件に別紙目録(一)記載の借地条件の目的を堅固建物所有に変更する。
2 右金員が支払われた場合、本件賃貸借の賃料を右金員支払の日の属する月の翌月分から一か月金七、八一八円に変更する。
〔理由〕一 本件申立の要旨
(一) 申立人は、昭和二二年ごろ相手方から別紙目録(一)の1記載の土地(以下「本件土地」という。)を期間二〇年、普通建物所有の目的で賃借し、右賃貸借は、昭和四二年一〇月一五日合意により更新され、本件土地の現借地条件は、同目録(一)記載のとおりである。
(二) 申立人は、本件土地上にまたがつて同目録(二)記載の建物を所有している。
(三) ところで、本件土地附近は、現在準防火地域に指定されているうえ、拡幅予定の環状六号線に接し、附近一帯の建物は鉄骨または鉄筋コンクリート造が大部分となつており、事情の変更により堅固建物所有を目的とするのが相当であるに至つた。
(四) そこで、申立人は、前記建物を取りこわし、鉄筋コンクリート造三階建に改築すべく計画中であるが、借地条件の目的の変更につき相手方との協議が調わないので、右借地条件の変更の裁判を求める。
二 当裁判所の判断
(一) 本件で取調べた資料によれば、前記一の(一)(二)の事実のほか、本件土地は、本件土地賃貸借成立当時の昭和二二年ごろは木造建物が大部分であつたが、現在は、準防火地域に指定され、環状六号線の拡幅にともない、急速に堅固な建物が増加しつつあつて、附近の土地利用状況の変化により現に借地権を設定するとすれば、堅固建物所有を目的とするのが相当な地域に至つたことがそれぞれ認められる。本件において、本件賃借権の目的を堅固建物所有に変更し堅固建物へ改築しようとする申立を不当とする事由はない。そこで本件申立は後記の条件の下に許可するのが相当である。
(二) 附随の処分について。
鑑定委員会は、申立人に対し金八八九、八四〇円の支払を命じ、地代を月額金六、〇一八円に増額するのが相当である、とし、給付金の根拠として、新旧借地権の価格差を更地価格(金一七、三七二、九七〇円)の八%とし、支払われた更新料五〇万円を控除して求めている。
当裁判所も、本件目的変更に伴い堅固建物の建築が可能となり、申立人の借地権は安定し、相手方の土地返還の期待は減少するので、その利害を調整するため申立人に給付金の支払を命じ、賃料を増額するのを相当とする。そして鑑定委員会の定めた給付金は、従前の裁判例に比し、やや低額であるが、本件借地契約は、昭和四二年一〇月一五日合意により更新され、その残存期間は、なお約三五年あり、その間建物朽廃による借地権消滅の危険もないことを考慮すると右金員は相当であるので当裁判所もこれに従う(ただし百円以下四捨五入する。)しかし賃料は、目的変更後の改築計画が三階建であり、必ずしも最有効な使用方法ではないことを考慮しても、堅固建物所有の借地権のものとしてやや低額であるので、右委員会の意見による底地価格の年二%にあたる月額金七八一八円(円未満四捨五入)と定める。なお前記のとおり本件借地契約の残存期間は、堅固建物所有の目的にそうもので、これを変更する必要はない。 (筧康生)
目録(一)
(借地条件)
1目的土地 東京都板橋区大山東町二九番一
宅地 232.62平方米のうち113.69平方米
(別紙図面中斜線部分)
2目的 普通建物所有
3成立 昭和二二年ごろ
4更新契約 昭和四二年一〇月一五日
5期間 昭和八二年一〇月一五日まで
6現賃料 一か月金三、四三九円
目録(二)
(建物)
家屋番号 二九番一の一
鉄骨造木造スレート葺平家建工場
92.63平方米
図面(略)